GYMLABO PROJECT

GYMLABOプロジェクト

九州工業大学GYMLABOのトータルデザイン

 九州工業大学GYMLABOは計画段階から設計、施⼯、運営のすべてのプロセスにおいて、本学の教職員・学⽣・連携企業が協働し、役割を担ってきたところが特徴的なプロジェクトです。
 
 GYMLABOの前身である旧体育館は1965年に建設され、講義やサークル活動など、50年にわたって多くの学生・教職員に利用されたのち、活用されないままになっていました。このような経緯から、110周年を迎えた九州⼯業⼤学の記念事業として、2019 年に旧体育館の再⽣プロジェクトが発⾜しました。 
 
 大学におけるイノベーションハブとしての機能を持った空間が求められていたことから、プロジェクトチームをコアとした企業訪問、若⼿教職員へのヒアリング、コワーキングスペースの⾒学等を通して旧体育館に求められる機能や活⽤法を探りました。さらに、学⽣・教職員・企業などの参加者とのワークショップを開催し、ニーズ、アイデア、意⾒を共有しました。
 
 戸畑キャンパスのランドスケープは、その歴史と現存する植生から海岸マツ林を地域の原風景として捉えることができます。このため、全体のコンセプトやデザインにマツをモティーフとして用いました。また、旧体育館から引き継がれたGYMLABOの構造は、よく観察してみると、とてもユニークです。内部の大空間を確保するために、外部の構造によって支えられています。設計のアイデアを進めて行く段階で行き詰まっていたときに、ふと体育館の縦横比を計算してみると、黄金比(1:1.618)になっていることに気づきました。これらのプロセスからデザインのコンセプトが具体的なかたちになり、プロジェクトチームの協働で大きく展開しながら現在のデザインに辿り着きました。
 
 学生、教職員、大学と連携する民間企業の方々などが普段から訪れやすい空間にするために、キャンパスの風景に溶け込めるような場所を目指してディレクションを行ってきました。プロジェクトのプロセスのなかで、大切な資産であったベーゼンドルファーのピアノの復刻と設置も、教職員と学生、民間企業の協働によって行われました。九工大GYMLABOは多くの卒業生の記憶に残る建築物であり、設計プロセスを経て、イノベーションハブとしての役割を果たしています。運営においても協働で新たなコンテンツを盛り込むことで、さらなる展開が期待されています。(伊東啓太郎 デザインディレクター/九州工業大学大学院教授)
 

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